読書記録~ジジイの片づけ~

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コロナが日本に蔓延し始め、前代未聞の「緊急事態宣言」が出されたころの事。以前よりゴミの量が増えたとニュースが流れていました。外出もままならず、家でできる気分転換は「断捨離」だと考えた人は多いらしく、今がチャンスとばかりに不用品を処分した結果だそう。当時は感染者が増え、ゴミの回収に支障が出る地域があったから、ちょっとした社会問題だったように記憶しています。物が豊富にある時代、いつの頃からか「片づけ」は国民的課題になってきました。この本は著者の「片づけ」の心得やエピソードを、イラストレーターならではの独特な目線でユーモラスに綴ったエッセイです。

 

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部屋をモノであふれさせるのが喜びであったはずが、いつしかその生活が疎ましくなり始めた著者。趣味の山登りを通して「片づけ」は若い頃から習慣として身についているけれど、目指しているのはミニマリストでも断捨離でもない。快適に生きるための手段として「片づけ」を行うのだと言い切ります。

「片づけも一汁一菜」

毎日行う片づけというものは、人を羨ましがらせたり幸せを見せつけたりするるためのものではない。自分が快適で心地良く、健康で幸せに生きるためのつつましい日課である。

なんのために片付けるのか、を明快に説いた一文だと思います。生活感の無い部屋を好む人もいれば、多少散らかっている方が落ち着く、という人もいるでしょう。研究者や作家の、本や資料に囲まれた無秩序に見える部屋も、実は彼らなりのルールで片付いていたりするものです。モデルルームのような空間にすることが正解なのではなく、どんな状態であれ、住み手が快適であればそれで良いのだと思います。

「明窓浄机の部屋」

ものを置かないということは、決断力を鍛えることでもある。

~中略~

隠遁とは老いた者だけに許される身分ではない。何歳であろうと、無駄なもののない空間で、清らかな時間を持てることは宝であり、その精神的な贅沢こそが隠遁なのである。

都会にいながら清く静かな生活を求めるのが隠遁術である、と言う著者。それは魅力的な部屋に住む著者の友人・知人の暮らしからもうかがい知ることができます。彼らの部屋はきれいに片付き、何を置くか厳しく見定め、必要ないものは買わない。俗世間の価値観や他人の評価・評判から離れ、自分の心にのみ耳を傾ける生き方は、まさしく「清く静か」であると言えましょう。

さぁ、そうとなったら部屋を片付けないわけにはいきません。忙しさを理由に、テーブルの上は散らかりっぱなし。片づけ一汁一菜の精神で取り組みますか。

 

 

 

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