冬のカケラ

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ふぅ、やれやれ・・・仕事から帰ってきて、腰を落ち着ける前に洗濯物を取り込もうとベランダに出ると、明るい一つ星が見えた。誘われるように少し身を乗り出して夜空を眺めると、3つ並んだ星が見える。その星々を中心に4つの星が四角形を描く。あれって・・・オリオン座?洗濯物を急いで取り込み、ネットで検索すると、間違いなくオリオン座だ。冬の夜空に輝く代表的な星座だと書かれていた。

うわぁ。こんなにきれいに星座が見られるなんて。

ひときわ輝く星々を結んだ「冬の大三角」も確認できる。はるか昔に名付けられた星座が、悠久の時を経てもなあ、天空で輝きを放っている。今見ているこの光は、何年かけて地球に届いているのだろう。気の遠くなるような時間と宇宙の壮大さに眩暈がしそうだ。寒さも忘れ、夜空に描かれる星の世界にしばし眺め入ってしまった。

次の日の朝。

珈琲を入れようとキッチンカウンターの前に立つと、カーテンのすき間から三日月が見えた。いつもより黄色く見えるそれは、決して派手ではないのに目が離せなくなる妖しさと鋭さがある。こんな刀があったらきっと妖刀と呼ばれたに違いない、などど考えながらドリッパーにセットした珈琲にお湯を注ぐ。真冬の時期はあんなに真っ白だった湯気が日増しにその色を無くしていくさまに、春が一歩一歩確実に近づいていることを感じる。季節の移り変わりを教えてくれるのは、いつもこんな何気ない日常の一コマだ。

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部屋の中はいつも満月

太陽だって立春の声を聴いて以来、俄然やる気を出し始め、6時を前にして顔を出す。つい最近まで日の出を待ち遠しく思っていたのがウソのようだ。まもなく小鳥たちの恋の季節となり、朝早くからにぎやかになることを思うと、この静けさを楽しめるのもあとわずかだろう。

気温は15度を超える日が続くでしょう。花粉も飛び始めます。

ニュースは春の到来を告げるけれど、日常の中にはまだ冬のカケラが残っている。そのカケラを拾い集めて、過ぎ去る冬をもう少しだけ感じていたい。